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泰三子、ハコヅメ「別章アンボックス」についてと感想。いつもと雰囲気が違う暗く重め（※ネタバレ含む）

ハコヅメ 漫画

記事が長くなったので分割して追加。泰三子の漫画「ハコヅメ」、別章の「アンボックス」についてと読んだ感想。

今まで「タイ」と勝手に読んでいたけど、作者の読みは「やす みこ」だった。

ハコズメ別章「アンボックス」

ハコヅメ別章 アンボックス - 泰三子 / その①くノ一誕生 | コミックDAYS

別章で全１０話。連載は１４９と１５０の間の話。メインがいつもの二人でなく、生活安全課で「くの一」の異名を持つ黒田カナの物語。いつものメンバーも出るけど脇役。カナの教官だった横井がけっこう出る。作品紹介欄に、

『アンボックス』の題材は殺人事件で、楽しい事は何も出てこないので、目にしたくない方が飛ばしやすいようにタイトルを変えました。

とあるぐらいに、いつものとは違う。男女間トラブル（本編でも登場のカップル。痴話喧嘩しては警察が呼ばれたり呼んだり）からの殺人事件。

人によっては分けなくても大丈夫なぐらいだけど、宣言通りにいつもとは違うのでいつもの「ハコヅメ」に戻ると安心するぐらいにはいつものとは違う。初期のB級下ネタ的なのが好きな人には合わなさそう。

話としては面白いは面白いけど、読んでてしんどい部分がある。一度だけでもう読みたくないと言う人も。逆にこのアンボックスだけ単行本を買ったというぐらいに気に入る人もおられた。

するしないは自由と思うけど、苦手な人への配慮があるのは優しい。嫌なら見るなは淋しい。 

「その①くノ一誕生」のみ無料公開。

2022年07月07日、マガポケでも読めるようになった（アプリなら無料獲得できるポイントで購入可）→ハコヅメ 別章 アンボックス - 泰三子 / 【別章その1】くノ一誕生 | マガポケ

マガポケについては、

連載期間について

その１４９　撮り直せない写真（2021/01/21）その１５０ | コミックDAYS

その１５０　それぞれが掲げる嗜好の旗印（2021/04/08）その１４９ | コミックDAYS

の間にあたる。単行本では17巻がその１４９まで掲載。17巻と18巻の間に当る。期間は、2021/01/28から04/01の約２ヶ月連載。計１０話。

タイトル一覧
  • その①　くノ一誕生
  • 別章その②　事件発生
  • 別章その③　現場臨場
  • 別章その④　正義を睨む冷たい目
  • 別章その⑤　それぞれの果たすべき責任
  • 別章その⑥　託された使命の重み
  • 別章その⑦　最悪の裏切り
  • 別章その⑧　空白の３時間
  • 別章その⑨　一致団結
  • 別章その⑩　貫き通した正義の先に

ハコヅメ～交番女子の逆襲～　別章　アンボックス (モーニングコミックス)
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価格は税込み７１５円。2022年1月時点、ネットの書店では在庫がない。アマゾンでは本体価格650円（税抜）が1,000円前後になっていたり。実店舗で普通に見掛けるけど、地域差があるのか。→落ち着いたの見掛けるように。アニメ化などの影響でも中古屋でも見掛ける。

「別章アンボックス」での内容（※ネタバレ含む）

合わなさそうだから読まない人と、何があるか分かってから読みたい人向けに、何があったかをだけ。

  • 黒田カナの警察官になった動機に至る境遇がわかる。水害で源の実父マコ（岩元誠）が避難を拒んだ高齢女性の救助に向かい土砂崩れに巻き込まれ殉職した。この時の高齢女性が黒田カナの曾祖母であり、なぜ避難させなかったのかと責められ小さな田舎で村八分に遭い、経営する建設会社は傾き祖父は自殺、両親はそれぞれ別の人と出て行き、カナは祖母に育てられる。
  • 今まで週1～2で通報があった痴話喧嘩カップルの事件が起きる。女が殺害される（遺体はまだない）。
  • 被害者の風評被害（風俗で働いていたなど）が起きる。
  • 山中に埋められ変わり果てた姿で遺体が発見される。
  • 男を死体遺棄の罪で逮捕。ヨリを戻したがった被害者が自殺し損なってトドメを刺したと供述。
  • 源が取り調べする。
  • 未公表なので名指しではないが、担当警察官が世間から非難される。カナが精神的にダメージ受けまくる。
  • カナ、「生まれてこなきゃ良かった」と銃で自殺しようとする。部屋に入ってきた山田が止める。拳銃で自殺が、警察への裏切りという意味。
  • 被害者の事件前の行動が分かる。川合、睡眠時間削って聞き込みの加勢する。
  • 生活安全課の西川係長が休んでいたが、ガン再発で入院するも死亡。
  • カナ、辞職する。
  • ５年後、カンボジアにいるカナの姿。

別章という体だけど、話としてはしっかり繋がっているので、未読だと、何のことか分からない部分が若干あると思う。キャラとしては、カナが辞めたと西川係長が亡くなった。話としては、バッシングされるような事件があった。

（補足）源の実父の話は「その１１１　その心構えを怠るな（その１１１ その心構えを怠るな | コミックDAYS）」であった。

「別章アンボックス」のバナーに「この中に裏切り者がいる――。」とある。「その１３９　最後の昼餐（その１３９ 最後の昼餐 | コミックDAYS　16巻掲載）」でダ・ヴィンチ「最後の晩餐」の構図と似ている場面がある。その時のカナはユダの位置にいる。参考→『ハコヅメ』16巻に描かれた「最後の晩餐」のシーンを詳しく調べてみた｜江口ひろ｜note（誰がどこにいるか書かれていて分かりやすい）

西川係長は「その１４９　撮り直せない写真（その１４９ 撮り直せない写真 | コミックDAYS）」で、警察手帳の写真を撮る話だった。タイトルは、昇進するまで撮り直せないの意で使われていたが、昇進しようがなくなってしまった。最後に撮った写真も、カナが辞めたのでもう撮れないとも。

時系列をまとめられた方のツイート。章ごとで分かりやすい。連載期間としては、149話と150話の間だが、時間軸としては別章9と10の間に150話がある。犯行から9日で犯人自供して、10・11日間で事件が終わり、その二週間後にカナ退官。警察官学校時代と後日談と5年後のは置いとくと、10日間の話だったという。もっと長い感じがしてたサザエさん時間だけど、本編149話以前が冬の時期で、151話で歓迎会・152話でサクラが復帰で春の季節になりしたりとで、150話から151話で数ヶ月経っている。

黒田カナをまとめられた方のfusetter（ふせったー）

「別章アンボックス」の感想

殺人事件に警察へのバッシングと、常なら明るさとギャグで見やすくなのがならない。あと川合麻依の存在が凄いのだと改めて認識。黒田カナは、はじめ器用な人と思ったけど、境遇が複雑で、警察官になったのも純粋な正義感だけではない。でも共感できる描き方。

f:id:cethyan:20210723161428p:plain（別章アンボックス　その①くノ一誕生14pより）

黒田カナの家庭環境がえぐい。

私の祖母が「家から出たくない、死ぬならこの家で死ぬ。ほっといて」と同じようなタイプだったので、実際に何か起きてたらと思うと他人事でない。個人なら自分の安全を優先したで仕方無いが通るけど、警察官は言葉通りに「じゃあ、ほっときます」とはならない。雲仙・普賢岳噴火（平成2年11月）では報道関係者の一部が要請に従わずで、記者だけでなく同行のタクシー運転手、地元消防団員１２人、警察官２人が亡くなっている。人数は異なるけど、避難しない人の為に亡くなられた点で似ている。

「その①くノ一誕生」は黒田カナの警察学校時代。

「その②事件発生」で、警察学校卒業から数年後で事件発生。「その③現場臨場」で、事件現場に。記者の人が、認知していた事件を防げなかったのかと厳しいことを言う。これは警察側からの話とはいえ、ただ警察を擁護するだけの話ではない。「その④正義を睨む冷たい目」では、カナらは同じ警察官からも冷たい目を感じる。

　大山翔（おおやましょう）と秋田るみ（あきたるみ）カップルの痴話喧嘩で通報がある。今までも週に1～2回ほど通報していた。別れてはヨリを戻してのくり返し。本気で別れるとして、秋田るみを実家に連れて行く。急に凶悪犯罪に発展するからと安全対策として実家に秋田るみを連れていったのに（これ自体は悪くないと思う）、このタイミングで事件に発展してしまうから、カナは自分を責めてしまう。もう会わない連絡も取らないようにと言ってたのに、なぜ会ったのか。

大山が分かりやすいぐらいにろくでもない男。部屋出てと言われて（部屋の契約が秋山るみ名義）、目の前の警察官（藤）に「お姉さんち住まわせてよ」と言ったり、断られたら警察署のほかの女の人は？　電話して探してと人にさせようとするおんぶに抱っこな男。でも「私がいないと生きてけない」と女が思ってしまい悪循環。ヒモも家事全般する寧ろ有難いのから、何もしないのから、暴力までピンから切りまである。大山は事件が起こるまでは暴力は振るわなかった。

「その⑤それぞれの果たすべき責任」で、被害者の女の子がデリヘルで働いていたことで叩かれる（学費などで親を頼れなかったからか）。被害者の家族まで。安直に浮気が原因だろと言われる。実際でも、風俗嬢が恋人を殺害した事件が起こった時、まだ動機も何も分からない段階で、昼のワイドショーのコメンテーターの女性が「こんな仕事しているから、この女が悪い」と断言してて驚いたことがある。後で判明した動機は、田舎から出てきた女の人をこの殺害された男が利用して、風俗で働かせてお金を貢がせていたので、殺害されるまでの関係性は寧ろ被害者だった。女の人で風俗関係で働く人を目の敵にする人がたまにいる。逆に女だから悪くないという人もいるけど。

大山、今まで女の子に甘やかされ過ぎたから、家もお金もなく働けと正論を言われても出来ない。事件前に源と会話して「わかった」と言ったけど、本当に分かって言ったのかが分からない。早く終わりたくてとも思えるし。遺体発見後の態度も酷い。認める筈もなく、態度も変わらず。源との会話は省かれていたけど、取調べとは違うみたいで、能力は発揮できないのか。

「その⑥託された使命の重み」で、源が取り調べをすることに。初めから任せるために、体力温存と事件内容を把握を兼ねて事務方をさせるのは、警察ものでは何度か見たから、良くある話なのか？

「その⑦最悪の裏切り」で、自殺しようとするカナをタイミング良く山田が助け、その後もフォロー。初め家に二人でいるのを見たとき、すでに何かあった後かと思ったけど、わざわざカナが色々して貰って悪いからと提案しているので多分何もない。山田は、中身が格好良い。

「その⑧空白の3時間」で、被害者の子は、一人で会いに行った理由が分かったけど、大事なもの（大事にしていた美容師用のはさみとケース）だから自分で取りに行きたいは分かるし、今まで暴言はあれど暴力はなかったからそこまでの自体になるとは思わなかったからだけど、なぜ一人で会いに行くと、後出しじゃんけん的な感想になってしまう。この大事なものがキーワードなのか大山は「俺が、るみを殺しました」と、どう殺害したかの状況と動機を話す。捨てられて一人ぼっちになるくらいなら、殺そうと思った。

「その⑩貫き通した正義の先に」で、事件のその後、カナが警察を辞める。どうしてという副署長も良いけど、辞めるのを止めない上司も良い。無理難題言うから「かぐや姫」と変な呼ばれ方してたけど、一番部下のこと見ている。

印象に残ったシーン
  • カナの境遇の話（源に対して複雑だったんじゃ。源は知っているのかは分からない）
  • 刑事課課長の読みが当るところ（前々から次の事件発生現場の読みとかしてたけどすごい）
  • カナのやつれっぷり（いつものふっくら顔の面影が無い）
  • 中富を信じて任せて下さいと懇願する鎌田部長（狂犬、熱い）
  • 大山を取調べしている源がニコニコしているのが、喋らせる技術と分かるけど怖い。山田は顔に出る（源のすごさをもっと見たい。あえてだろうけど、気持ち悪さばかり見させられているから）
  • 証言してくれた人（警察への印象悪かったのに話してくれた良い人）
  • 黙って警察署を去るつもりだったカナに、引き留める手を全て振り解いて行けと横井教官が言う所。普段冷静な横井教官の熱さ。逃げるように出て行くカナに、止めようとする生活安全課の仲間に、同期の山田。

気になるのは、度々警察官の同期の絆の話が出るけど、そこまでに至るところが気になる。警察官学校時代でそんなに培われるものなのか？　藤と源の代は気持ち悪い期と言われるけど、どうなったらそうなるのか。ハコヅメはページ数の都合もあってか、省かれるのが多くて、想像してねな感じになるけど、簡単に想像できるのとできないのがある。158話の玄田部長の取調べのときの、恥の晒しっぷりとかは簡単な部類。

源は、天才として理解されない、それを当人も分かっているという、後々の話の伏線があるのが気になる、

終われば全１０話と単行本一冊の長さ。事件としては意表をつくとか、新犯人は～と、トリックが～とかそういうのはなく、一つの事件が起きた時の警察官や被害者の心情や周りの反応。笑いが全く無いというわけではないけど、人が亡くなっているのでいつもよりは重め。

源は取り調べに任命されたけど、話し的には山田と横井と中富が目立った印象。

今後、本編でし難い内容のときは、「別章」という形でするんだろうか。

公式ツイッターでのアンボックス連載時のツイート

「別章アンボックス」の感想を書いたサイトなど

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以前に書いた記事。